「季刊誌ふれあい」デジタル版
母の日に、彩と想いを届ける。 花のプロが語る「アジサイギフト」の魅力と選び方
目次
「母の日の贈り物といえば、カーネーション」
そんなイメージを持つ方は多いかもしれません。
けれど最近、花屋の現場ではアジサイの人気があがってきていることをご存知でしょうか?
今回は、母の日ギフトにおすすめのアジサイについて、東京都府中市のフラワーショップ『HANAYOSHI』さんを訪ね、その魅力や育て方、選び方のコツを小池社長に伺いました。

株式会社フローレツエンティワン 代表取締役社長
小池 雅也(こいけ まさや)氏
1. アジサイが届けるのは、長く続く“ありがとう”の気持ち
母の日にカーネーションを贈る風習は、20世紀初頭のアメリカが発祥とされています。
ある女性が亡き母を偲び、白いカーネーションを教会で配ったことがきっかけとなり、やがて「母の日」が制定されるとともに、カーネーションが“母への感謝”を象徴する花として広まっていきました。
小池社長
母の日用にカーネーションを選ばれるお客様ももちろんいらっしゃいますが、最近はアジサイの人気も増えてきているんですよ。
実はカーネーションは母の日のためだけに生産され、2週間ほどの短期間しか流通せず、鉢物の寿命も短いのだそうです。
一方でアジサイは、4月初旬から出回り始め、育て方によっては2ヶ月以上楽しめる品種も多く、秋口まで咲くこともあるそうです。
品種によって金額もさまざまですが、3,000円〜5,000円程度で購入できるものも多く、母の日のギフトとしては選びやすく、コストパフォーマンスにも優れたお花です。
さらにアジサイの花言葉には「家族団らん」「感謝」「辛抱強さ」など、母の日にぴったりの意味が込められています。
そのため、見た目の美しさだけでなく、贈る気持ちまでしっかりと伝えられる花として選ばれているのです。
小池社長
同じ金額を出してカーネーションの花束を買うのであれば、やっぱり長く楽しめるもののほうがいい。アジサイは、ちゃんと育てれば夏を越えて10月まで咲いてくれることもあるんですよ。

竜宮(上) 夕霧(左) コットンキャンディ―(右)

マジカルドリーム(左) マジカルチョコレート(右)
2. 一期一会の花が、記憶に残るギフトに
アジサイの魅力のひとつは、品種の多さと、その進化のスピードにあります。毎年のように新しい品種が登場し、見た目の美しさや色の変化、耐久性などが改良され続けているアジサイ。
小池社長
特にオランダでは育種の体制がとても整っていて、無菌の環境で数千種を育成し、その中から厳選されたものだけが市場に出るんです。その流れが日本にも広がり、花の現場にも毎年多くの新しいアジサイが届いています。
その年だけの限定出荷となる品種もあるため、特別な想い出として心に残る贈り物になることもあります。
そんなアジサイの代表格と言えば「コットンキャンディー」。

コットンキャンディー(ピンク)
現在市場に流通しているアジサイの中でも圧倒的な人気を誇る品種で、柔らかなピンクと白のグラデーションが可愛らしく、しかも丈夫で育てやすいことから、初めてアジサイを育てる方からも好んで選ばれています。
3. 贈る人にぴったりの一鉢を選ぶためのポイント
アジサイは、その種類の豊富さと個性ゆえに、贈る相手の好みや暮らし方に合わせて選べることも魅力です。
小池社長
ガーデニングが趣味の方にはちょっと珍しい品種を。
あまり植物に慣れていない方には、丈夫で育てやすいものを提案しています。
小池社長
お住まいの環境に合わせて鉢のサイズを選ぶのも大切です。
たとえばマンションにお住まいの方や東京のような都市部では、窓際やベランダでも育てやすい5寸鉢がおすすめです。
一方で、ご実家が郊外や地方にある方には、7寸や8寸の大きめの鉢でも玄関先に置いて楽しんでいただけると思いますよ。
現在フラワーショップ『HANAYOSHI』さんで取り寄せているおすすめのアジサイを紹介していただきました。
コットンキャンディー

コットンキャンディー(ピンク)
やさしいピンク色で、咲き始めは白緑から徐々にピンクへと色づいていく「玉咲き」(花が丸くつくタイプ)の品種。
株数が多く、花付きが良いことに加えて、枝が丈夫で倒れにくく、花弁も強いため、長くお楽しみいただけるのが特長です。
もっとも人気の高い定番品種として広く知られており、丈夫で育てやすいため、アジサイを初めて育てる方にもおすすめです。

コットンキャンディー(ピンク)

コットンキャンディー(ピンク)
マジカルチョコレート(レッド/パープル)、マジカルドリーム(ピンク)

マジカルドリーム(ピンク)
「玉咲き」(花が丸くつくタイプ)の品種。
深みのあるシックな色合いが魅力で、咲き進むとアンティークな色調に変化します。花びらを支えるガクが厚く、花持ちが良く、花色の変化が長く楽しめます。
特にマジカルドリームは他の品種よりも花色が移り変わりやすく、7.8寸鉢のため存在感があるのが特徴です。
ご家庭で庭植えした場合は、土壌により花色が変わることも特徴で、酸性の土に植えるとブルーになり、弱アルカリ性の土に植えるとピンクになります。

マジカルドリーム(ピンク)

マジカルチョコレート(レッド)

マジカルチョコレート(パープル)
竜宮

竜宮
小ぶりな八重咲きの花がぎゅっと集まった可憐な姿が特徴。
やや希少性が高く、特別感のある贈り物にぴったり。
優しいピンク色で贈る相手を選びません。

竜宮

竜宮

竜宮
夕霧(ピンク)

夕霧(ピンク)
ほんのりと淡いピンクがにじむように咲く、和の雰囲気をまとった上品で珍しい品種。落ち着いた印象で、ご年配のお母様にもおすすめです。

夕霧(ピンク)

夕霧(ピンク)

夕霧(ピンク)
卑弥呼(ブルー)

卑弥呼(ブルー)
丸みのある八重咲きの装飾花が特徴。ぎっしりと咲き、花もちも良く、ボリューム感があります。
濃く鮮やかな発色で、存在感のあるギフトになること間違いなし。

卑弥呼(ブルー)

卑弥呼(ブルー)

卑弥呼(ブルー)
ひな祭り(ブルー)

ひな祭り(ブルー)
ひな祭りの時期に咲く八重咲きのガクアジサイで、もともとは白地に濃いピンク色や青紫色の覆輪が特徴的な品種です。
星のような形の花びらが重なり、豪華な印象を与えます。
庭植えにも適しており、梅雨の時期でも花がしんなりしない丈夫さで、比較的育てやすいことも特徴のひとつ。
アンティークカラーへの色変化も楽しめます。

ひな祭り(ブルー)

ひな祭り(ブルー)

ひな祭り(ブルー)
4. アジサイを長く楽しむためのケアとは
アジサイは、基本的に育てやすい植物ですが、いくつかのポイントを押さえることで、より美しく長く楽しむことができます。
小池社長
毎日コップ1~2杯のお水をゆっくりあげてください。大事なのは、“与えすぎないこと”です。特に梅雨の時期は湿気があるので、土を手で触って乾き具合を確認しながら、水やりを調整してあげてくださいね。
アジサイって梅雨の花というイメージがあるかもしれませんが、実は湿気に弱くて、根腐れしやすいんですよ。
置き場所は直射日光を避け、カーテン越しのやわらかな光が入る風通しの良い場所に置くのがベストです。
さらに、アジサイは形状によってケア方法が異なります。
額咲き(星のような花の形が特徴)は茎が露出しているため風通しが良く、比較的管理が楽です。
一方、玉咲き(花が丸くつくのが特徴)は花が茎を包み込むように丸く咲くため、湿気がこもりやすくなります。そのため、花を少し手でかき分けて、傷んだ茎があれば取り除いてあげることでさらに長持ちに。
花が終わった後のケアも大切で、2節目の少し上で剪定して風通しの良い場所に置き、毎日お水を与えれば翌年も美しい花を咲かせる可能性が高まります。

アジサイを贈る際は、メッセージカードに加えて、簡単なケア方法を添えたカードを一緒に添えるのも良いでしょう。
受け取った人が安心して育てられ、より長く楽しんでもらうことができます。
《 アジサイのケア方法まとめ 》
〇 土の表面が乾かないように。お水は毎日200mI(コップ1~2杯)程度が目安
〇 根腐れにも注意。置き場所は直射日光を避け、風通しの良いところへ
〇 玉咲きアジサイは茎が痛んでいないか定期的に確認を
〇 花が終わったら2節目の少し上で剪定
〇 来年もきれいに咲かせるために剪定後もお水は欠かさずに
5. 色あせない、贈りものの記憶に

アデュラ(左) ひな祭り(下) 卑弥呼(右)
アジサイは一度きりの贈り物ではありません。鉢植えのままでも、翌年以降も花を咲かせてくれる可能性がとても高く、贈った後もその存在がずっとそばにあるお花です。
『HANAYOSHI』さんでも昨年贈ったアジサイが、今年もきれいに咲いたという声をお客様から受け取ることも多いと言います。
毎年違う品種を贈れば、まるでコレクションのように並ぶ色とりどりの記憶が、年を重ねるごとに心を彩っていきます——そんな、時を超えて想いをつなぐギフトなのです。
6. ただ仕入れるだけじゃない、“届けたい想い”から
フラワーショップ『HANAYOSHI』さんの母体は、都内の生花卸「株式会社フローレツエンティワン」。そのネットワークを活かし、小池社長自らが市場や生産地に足を運んで品質や状態を見極めながら仕入れを行っています。
小池社長
たとえば、同じ“コットンキャンディー”でも、生産者や育て方によって色の濃さや花の付き方が微妙に違うんです。やっぱり自分の目で見て仕入れるお花は選びたい。よりよい状態のお花をお客様に届けたいんです。

接客でも心がけているのは、ただ“売る”のではなく、“一緒に考えること”。
スタッフ1人1人が贈る相手の性格や生活環境、花との関わり方までヒアリングしながら、その人にとって一番うれしい一鉢を提案しているそうです。
小池社長
ヨーロッパでは花はもっと生活の中にあるもので、パンを買うように花を買うんです。日本ではまだ“特別な時に贈るもの”として扱われがちですが、例えばフラッと花屋に立ち寄って自分のための1本だけ花を買っていくとか。
もっと身近なものとして楽しんでもらえたらといつも思っています。
僕がこの業界でずっと目指していることです。

フラワーショップ『HANAYOSHI』

フラワーショップ『HANAYOSHI』
7. おわりに
アジサイは、見た目の華やかさだけでなく、育てる楽しみや贈った後の余韻までも楽しめる、奥行きのある花です。
「ありがとう」を伝えるだけでなく、「これからもよろしくね」「また来年も一緒に咲かせようね」そんな気持ちまで乗せられるのが、アジサイギフトの魅力なのかもしれません。
今年の母の日、大切な人の笑顔を思い浮かべながら、一鉢のアジサイにあなたの想いを込めてみてはいかがでしょうか?
フラワーショップ『HANAYOSHI』profile

所在地: 〒183-0057 東京都府中市晴見町1丁目16−15
営業時間: 9:00~19:00(日曜18:00まで)
電話番号: 042-366-0774
府中駅からほど近く、季節の花がやさしく迎えてくれるフラワーショップ『HANAYOSHI』
「花がもたらす幸せを、ひとりでも多くの方へ届けたい」——そんな想いを大切に、街に根ざしたあたたかな空気と、贈る人の気持ちに寄り添う丁寧な花選びで、地域の人々に長く親しまれてきた。
生花卸の専門会社「株式会社フローレツエンティワン」グループに所属し、新鮮で高品質な花材を安定して届けられるのも強みのひとつ。
普段使いの一輪から、記念日や節目の贈り物まで、年間を通じて多種多様なお客様の花贈りを支えている。
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