「季刊誌ふれあい」デジタル版
大切な人を見送ったあとに。葬儀後から始まる相続手続きの流れと、落ち着いて進めるためのポイント
目次
身近な人が亡くなると、悲しむ間もなく、役所や銀行、年金や保険などの手続きが次々と必要になります。
ところが実際には「葬儀が終わった直後、何を優先すべき?」「口座が凍結されたらどうする?」「相続放棄はいつまで?」など、期限のある手続きも多く、落ち着いてから…と思っているうちに時間が過ぎてしまうケースも少なくありません。
今回は、相続・終活の手続きを支援する『トリニティ・テクノロジー株式会社』の松田(まつだ)さんに、葬儀後に慌てないための進め方について、具体的に伺いました。
トリニティ・テクノロジー株式会社
行政書士 松田さん
1. 葬儀直後、まず何から始める?
- 葬儀が終わった直後は、気持ちの整理もつかないまま「何から手をつければいいのか分からない」という方も多いと思います。
そうした中で「これは最優先でやったほうがいい」という手続きはありますか?
松田さん
葬儀が終わった直後に、すぐにやらなきゃいけないことは実はそこまで多くないというのが、私の実感です。
死亡届の提出や火葬許可証の手続きは、葬儀社さんが代行してくださるケースが多く、葬儀が終わった段階では完了しているものですし、
その後の手続きに必要な戸籍謄本なども、亡くなった旨の記載が反映されるまでに2週間ほどかかることも多く、この期間は手続きを進めたくても待ちの時間になることがほとんどなんです。
- そうなんですね。とはいえ、すべてをゆっくり構えていていいわけではないと思うのですが、
ご遺族が早めに意識しておいた方が良いポイントなどはあるのでしょうか?
松田さん
意識すべきポイントでいうと、相続税の申告が必要になりそうかどうかは早めに把握するに越したことはありません。
相続放棄の期限は3カ月までですし、相続税がかかる可能性がある場合は、申告・納付期限が10カ月までと決まっています。
長いと思われるかもしれませんが、体感としてはあっという間に過ぎてしまいます。
相続税申告の場合は、実務でも、ご依頼をいただいてから5カ月ほど期間をいただくことが多いので、「落ち着いてから」と後回しにすると結果的に時間が足りなくなりやすいんです。
- 聞いたことがあります。相続税の10カ月ルールと、相続放棄の3カ月ルールですよね。
早めに全体像を知っておくだけでも、心の余裕は大きく変わりそうです。
松田さん
あとは、年金関係は早めの動き出しをおすすめします。
特に遺族年金は申請が遅れると支給が後ろ倒しになりがちです。
また、準確定申告が必要な場合も注意が必要です。
準確定申告には年金の源泉徴収票が必要になることがありますが、取得するのに時間がかかるので、なるべく早めが良いですね。
保険証やマイナンバーは、すぐ返納しなくても大丈夫です。
番号を確認したくなる場面があるので、むしろ手続きが落ち着くまで保管しておくのが安心です。
2. 1週間〜1カ月で対応すべき内容と、よくある「見落とし」
- 先ほど相続税のお話にも触れましたが、1週間から1カ月の時期に対応すべき内容をあらためて教えてください。
松田さん
この時期は、まずプラスの財産とマイナスの財産(借金など)の確認をなるべく早く進めてほしいです。
先ほどもお伝えしましたが、相続放棄は「3カ月以内」、相続税の申告は「10カ月以内」という期限がありますし、何から始めるかで結果が変わることもあるので、早めの把握が重要です。
- 財産の確認や、故人の身の回りの整理に関することで「そんなところで?」という意外な見落としはあったりするのでしょうか?
松田さん
最近増えているのは、スマホまわりの契約でしょうか…。
たとえば、アプリのサブスクリプション、各種オンライン契約、その他に何か定期購入していたり。
最終的には銀行口座を凍結することで支払いが止まるので、督促状が届いたり自動解約になったりするのでしょうが、事前に把握するならご自宅に届いている書類(郵便物)や明細を整理することが大切です。
- 確かに近年は定期購入がより一般的になっていますし、本人しかわからないものですから見落としてしまいそうですね。
松田さん
そうなんです。
その他に見落とされがちなのが遺言書の確認です。
「そんなことわかってるよ」と思われるかもしれませんが、遺言書の存在を知らないまま遺産分割協議を進め、あとから遺言書が見つかって話し合いが振り出しに戻ってしまう――こうしたケースは、実際の現場でも決して珍しくありません。
「遺言書があるか」も早めに確認しておくのが安心です。
3. 知らないと困る相続の期限と制度
- 期限がある手続きとして、特に注意すべきものは何ですか?
松田さん
相続放棄の3カ月、準確定申告の4カ月、相続税の10カ月ですね。
油断していると本当にあっという間です。
- 余談かもしれませんが、2024年から相続登記が義務化されたと聞きました。現場の認知はどうでしょう?
松田さん
以前は義務ではなかったので、長年そのまま放置されている不動産もありました。
曾祖父の名義のまま…というケースも珍しくなく、戸籍を遡って相続人を確定しなければならず、手続きが複雑になります。
今は法務局で調査が進んでいて、登記がされていない方へ通知が届くこともありますね。
名義変更がなされずに放置されている不動産は、財産価値が低いものが多く、相続放棄をしたいとご相談いただくこともあります。
しかし、曾祖父名義の不動産などの場合相続放棄の期限は当然に過ぎており、相続放棄はほぼ不可能となります。
相続した土地を国に帰属させる制度もありますが、手続きが煩雑で、ご自身で進めるのが難しいケースが多い印象です。
葬儀社さんが相続登記のことをご案内してくれるケースも増えていますが、体感としては認知は「半々」くらい。早めの相談が安心です。
4. 銀行口座の凍結とお金の使い方|トラブルを防ぐポイント
- 相続でよく聞く内容として「銀行口座が凍結されて困った」といったことをよく耳にします。
銀行口座の凍結のタイミングはいつですか?死亡届と連動して止まるのでしょうか?
松田さん
これはよくある認識違いなのですが、役所に死亡届を出したからといって、口座が自動で凍結されるわけではありません。
基本的には銀行に連絡をしたタイミングで凍結されます。
地方銀行などでは、コミュニティが狭いので、どこかから死亡の情報が入って先に止まってしまうこともあるみたいですが…
- なるほど。では死亡届を出す前に預金を引き出しておくべき…という話はまったく勘違いなのでしょうか?
松田さん
「必ず引き出したほうがいい」とは一概に言えません。
亡くなった方の財産を当然に使ってよいわけではなく、相続人みなさまの了承のもとで動かす必要があります。
葬儀代については一般的に理解が得られやすい面もありますが、葬儀代・納骨代・専門家費用などを相続財産からどう扱うかは、きちんと話し合いがついてから進めるのが安全です。
相続人同士の関係性が薄い(兄弟相続、前妻のお子さまがいる等)場合、立て替えた人が「あとで財産から費用を払ってもらえると思っていたのに…」という形でトラブルになることもあるんです。
「葬儀代のために」「凍結が不安で」と思って亡くなる直前に大きな出金をすると、後で分割協議を難しくする要因にもつながりやすいので注意が必要ですね。
- すぐに凍結されるわけではないけど、お金の引き出しには注意が必要ということですね。ちなみに凍結されてしまった場合、凍結解除や名義変更には、何が必要ですか?
松田さん
基本は、相続人の確定のための戸籍一式、相続人全員の印鑑証明書と署名・押印が必要になります。
相続人同士の関係性が薄い場合は、書類の収集や押印の取り付けに時間がかかり、1〜2カ月かかることも普通にあります。
そして、分割協議をして預金の取り扱いが決まって初めて、凍結解除の手続きに進めます。
5. 不動産・家族間トラブルを減らすために|専門家が入る意味
- 専門家の方が「間に入る」ことで、どんな変化がありますか?
松田さん
相続人同士で話していると、どうしても感情が先に立ってしまうことがあります。
専門家が間に入ることで、権利関係や法律をもとに整理して話ができるので、納得感のある分割協議に近づきやすいと思います。
たとえば介護をされていた方が「多くもらいたい」とおっしゃるケースもありますが、法律上認められるには要件が必要です。
こうした点を冷静に整理しながら進められるのが、第三者が入るメリットです。
松田さん
その他にも、専門家の関与をおすすめしたいケースとして、近年増えているのが、相続人の中に外国籍の方が含まれる相続です。
日本の戸籍制度は、世界的に見ても非常に精密な仕組みで、日本の相続手続きはこの戸籍をたどって相続人を確定していくことが前提となっています。
一方で、国によっては戸籍制度そのものが存在しなかったり、制度の考え方が大きく異なったりするため、
家族証明書などの書類を取り寄せて「他に相続人がいないこと」を証明する必要が生じます。
そのため、相続人に外国籍の方が含まれる場合は、専門家であっても手続きがスムーズに進みにくいケースが少なくありません。
こうした相続では、実際に相続が発生してから慌てて対応するのではなく、亡くなる前の段階で一度専門家に相談しておくことが、結果的にご家族の負担を大きく減らすことにつながります。
6. 慌てないための実践的アドバイス
- 手続きをスムーズに進めるために、事前の対策が大事なことがよくわかりました。
相続に必要なものの管理方法として、どんな方法がオススメですか?
松田さん
情報を1カ所にまとめておくことが良いのかなとは思っています。
銀行がどこか、生命保険に入っているか、何をどこに置いているかといった情報ですね。
私の場合はメモに一覧で書きだして、お財布に入れています。
PCのメモでも良いのですが、PCを開けられなかったら意味がないので、やはりここはアナログで(笑)
身の回りの情報整理としては有効な方法です。
また、エンディングノートがあると相続人の方は助かると思います。
法的な有効性はないですが、エンディングノートには遺言書では書かれない気持ちの面が綴られていることもあるので、生前なかなか話せなかったことを知れるツールにもなりますね。

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7. 最後に|「相談していい」タイミングの目安
松田さん
生前でも、相続が発生した後でも、気になることがあったら気軽に相談するのが良いと思います。
電話で相談するだけで「自分がやるべきことが分かった」という方は多いです。
相続人が高齢で、もし認知症になると分割協議ができなくなってしまい、家庭裁判所の介入が必要になってしまうケースもあります。
そういう意味でも、事前の相談はとても大切です。
トリニティ・テクノロジー株式会社 profile

「超高齢社会の課題を解決し、ずっと安心の世界をつくる」をミッションに掲げ、相続・終活・家族信託などに関するさまざまな課題に向き合う、リーガルテック企業。
2020年の設立以来、全国14拠点を展開し、年間20,000件以上の相続・終活に関するお問い合わせに対応。高齢化が進む日本において、家族の安心と資産の未来を守るためのサービスを幅広く提供している。
※2026年4月1日より、社名が『トリニティ・テクノロジー株式会社』から『株式会社こころのカンパニー』へ変更になります。
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