いせやの物語
- いせやの物語
- 第三話
武蔵野の雑木林をまもりたい。
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地域の声に応える霊園づくりを
生活道路であると同時に、思い思いの時を楽しめる、やすらぎの小径。
その隣接地に「小平ふれあいパーク」が計画されていることを知った近隣の方々から、
「雑木林を残してほしい」というたくさんの声が寄せられた。
こうした要望に応え、納得いただけるかたちにするのはもちろんのこと、
愛される場所にしなければならない。
その強い想いを胸に、基本設計から練り直すこととなった。 -
どうすれば、樹木を、景観を残せるか
豊かな雑木林を残しながら、
周囲の環境に違和感なく溶け込む佇まいにすること。
そのために、緑道との明確な境界を設けず、ひとつづきに感じる空間デザインを第一に考えた。
緑道側から霊園を見たとき、まず目に入るのは樹木の存在であるように、
バラをはじめとする園内の植栽の高さ、
レイアウトには細かく気を配り、設計図にもそれを反映していった。 -
通路は木を避けて曲線に、建物もシックに
緑道側はもちろんのこと、墓所予定地にもクヌギをはじめとする多くの樹木が根を張り、
大きく枝を広げていた。それも不規則な並びで。
これらを切ったり、移し替えたりすることなく残すため、園内の通路は木を避けるように曲線を用いて配した。
墓所区画も直線で区切れなくなり、レイアウトには非常に苦心した。
また、多目的ホールの建築においては、でき得る限りシックな佇まいを追求。
船底をモチーフにした礼拝堂や、爽やかな風の吹き抜けるウッドデッキなど、
木をふんだんに用い、コテージのような開放感と落ち着きある建物に仕上げた。 -
一方、倉庫跡だった花小金井では
「小平ふれあいパーク」から緑道を歩いて10分弱の、「花小金井ふれあいパーク」。
ここは、もともと倉庫跡地で、長らく放置されていた。
仮塀にはたくさんの落書きが見られ、荒れた雰囲気は否めないものだった。
それを、明るく、開かれた空間に変身させよう。
小平のケースとは、正反対のコンセプトでの霊園づくりをめざした。 -
近隣の環境向上に貢献する、明るく開放的な空間に
広々とした敷地を活かし、バラのアーチを中心に、彩り豊かな季節の植栽、
武蔵野産の緑の並木、噴水を配置。そこにフィットするモダンデザインの「ホールロゼリア」。
美しさへの計算の行き届いた、まさしくヨーロッパを思わせるガーデニング霊園に。
園を訪れる人はもちろん、周囲にも、明るい開放感と、芳しい香りをふりまく空間となるように。
そして、いま。
散歩やジョギング途中にベンチで休む人。バラの写真を撮りに来られる人。
皆様とごあいさつを交わすたび、
小平、花小金井のふれあいパークへの取り組みは、間違ってなかったのかなと思う。